今月の主題 黄疸
技術解説
肝生検の組織化学
市田 文弘
1
,
上村 朝輝
1
,
野本 実
1
,
渡辺 俊明
1
,
高橋 達
1
Fumihiro ICHIDA
1
,
Tomoteru KAMIMURA
1
,
Minoru NOMOTO
1
,
Toshiaki WATANABE
1
,
Toru TAKAHASHI
1
1新潟大学医学部第3内科学教室
pp.617-623
発行日 1985年6月15日
Published Date 1985/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542912586
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組織化学は組織細胞の構造を破壊せずにそこに存在する化学成分を明らかにする研究であり,一般的には光学顕微鏡レベルで観察しうる方法がとられる.これにより,色素,金属類,脂質,糖質,蛋白質,核酸,各種酵素,ビタミンなどの組織細胞内における同定がなされるようになった.さらに近年,免疫反応を応用した免疫組織化学の分野が発展し,ホルモン,免疫グロブリン,補体,ウイルス抗原,癌組織産生胎児蛋白,組織内浸潤リンパ球の種類その他多くのものの同定が可能となってきた.
一方肝疾患の確定診断には肝生検による組織所見が最終的な決め手となることが多いことはいうまでもない.通常わが国において頻度の高い肝疾患としては,肝炎ウイルスの感染に起因する急性肝炎,慢性肝炎,肝硬変,肝癌,さらにアルコール多飲による肝疾患,薬物過敏反応による肝障害,脂質代謝障害による脂肪肝などがある.これらを含めた各種肝疾患の肝生検による組織診断のためには,一般にヘマトキシリン—エオジン(HE)染色,鍍銀染色,PAS染色,ジアスターゼ消化後PAS染色などが用いられるが,Azan染色,van Gieson染色,オルセイン染色,鉄染色その他の特殊染色も有用なことが少なくない.ここでは肝生検組織診断上において組織化学が有用ないくつかの間題をとりあげ,関連事項を概説する.
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