Japanese
English
展望 病理
神経系の組織病理学
The Neuropathology of the nervous System (A Review of recent works)
猪瀨 正
1
Tadashi Inose
1
1横浜市立大学医学部神経科教室
1The neuropsychiatric Department of Yokohama University
pp.144-148
発行日 1956年4月15日
Published Date 1956/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431901510
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前回の展望に引続いて筆をとることになつたが,文献をみる眼はとかく散乱し勝ちであつて,まとまつた紹介をすることは私には到底不可能である。そこで今回は,比較的最近に手もとに届いたものの中から多少とも興味のあるものを羅列して,寸評を加えるに止まつたことをお断りしなければならない。
まず小脳に関する二つの業績がある。一つはO. Schrappe1)の「小脳の急性障害」という論文であるが,なかなか堅実な仕事である。小脳障害に関しては有名なSpielmeyerの研究があつて,そこでは専らPurkinje細胞の被侵襲性Vulnera-bilitätが問題となつた。またScholzは先に紹介した著書2)の中で,それを更に詳しく追究して,小脳実質の貧血乃至低酸素血状態に於ける被侵襲性を明かにした。彼によれぽ,Purkinje細胞,星形細胞,次いで顆粒細胞,最後にGolgi細胞に及ぶという。Schrappeは,脳の急性の全般的障害に際しては,穎粒層に屡々予想外の重篤な病変が生じ得ることに注目して,50例の急性乃至亜急性死亡例について,小脳所見を系統的に検索した。そして小脳の急性障害は,SpielmeyerやScholzの貧血や低酸索血状態のそれとことなつて,(1)顆粒層の水泡状態Status bullosus,(2)同層の桑実状態Morulastatus,(3)小脳小樹の髄質浮腫,の3つに分類されるという。
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