Japanese
English
展望 病理
神経系の組織病理学
Histopathology of the Nervous System (a Review of Recent Works)
猪瀨 正
1
Tadashi Inose
1
1横浜大学神経精神科
1Neuropsychiatric Department, Yokohama Univ. Medical School
pp.151-156
発行日 1956年1月15日
Published Date 1956/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431901489
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展望というものは,大体過去一年間の業績をふりかえつて,それを紹介するのが本筋であろうが,私は期間には余りこだわらないでこの領域の課題の中心がどこにあるかを記してみようと思う。さて組織病理学に関係している者にとつては,戦後既にいくつかの注目に価する出来事があつた。その第一は,1952年に開かれた第一回国際神経病理学会であつて,それは戦前戦後を通じて,最初の国際学会であつた。そこでは組織病理学のほとんどあらゆる分野に渉つて業績の発表と討論が行われた。そして,それによつて戦争中の空白が満されると同時に,新しい研究方向のいくつかが示されたのであつた。第二にはMohrの内科叢書の神経学の3巻1)の出版があつたことである。そして注目すべきは,その執筆者として多くの神経病理学者が参加していることで,神経系の病理解剖に基礎を置いた著書であると云えよう。その記述は新しい研究業績を網羅していて,文献の整理は,1936年に出版されたBumke-Foersterの叢書のその後を補うに足るものである。第三にはHenke-Lubarschの病理学叢書がScholz教授の監修で神経系の部分2)を始めて出版するに至つたことである。既に3巻の中1巻は完成して,われわれの手許に届いている。この二つの出版は,並々ならぬ努力の結晶であつて,敗戦後の独逸医学の意気を示すとともに,その復興の力はまさに世界を圧するほどのものであると云うべきであろう。
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