特集 肝脳疾患・Ⅰ
肝脳疾患とGenetics
山内 典男
1
1大阪大学医学部精神神経科学教室
pp.301-315
発行日 1959年1月20日
Published Date 1959/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431901675
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諸言
肝と脳とが同時に,または継時的に相互に影響し合つて障害される疾患群を肝脳疾患という概念に包括することが出来る。この場合には極めて異質的な種々の疾患が包含されるのであつて,例えば冲中らは,肝レンズ核変性症,肝脳疾患特殊型(猪瀬),重症肝疾患にみられる意識溷濁,慢性重症疾患時の神経症例,"Kernikterus",伝染性重症肝炎と脳神経障害,肝疾患で脳に組織学的変化を認めるものの7型を区別しているが,これらのほかにも相当数の疾患がこの範疇に入られてよい。即ち神経疾患で肝障害を合併し,しかも肝障害が神経障害の成立を可成り規定していると思われる場合(例えばアルコール中毒にみられる上部出血性灰白脳炎など)や,精神疾患で肝障害,少くとも肝の部分機能の障害を伴つているもの(例えばフェニール焦性葡萄酸性神経薄弱の生肝標本ではフェニールアラニンの核酸化が行われず,正常人のそれは核酸化を行う。脳組織自体はフェニール核の酸化を行わないのに,フェニールアラニン欠乏食で智能の向上が認められる。その他にも2,3の代謝障害,例えば最近問題になつている"H"-diseaseなどもこの中に入れられよつなどがあり,分裂病,特に週期性緊張病のある型での肝障害やN-代謝障害は既に認められた事実であり,躁鬱病の病相期にP-オキシフェール焦性葡萄酸の酸化が知られている。肝脳相間を問題とする場合には当然これらのものも包含されてよいと思われる。
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