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特集 ポリグルタミン病の病態機序
ポリグルタミン病治療法開発への展望
Toward developing therapeutic approaches for polyglutamine diseases
辻 省次
1
Shoji Tsuji
1
1東京大学大学院医学系研究科神経内科
1Department of Neurology, Graduate School of Medicine, University of Tokyo
pp.616-618
発行日 2002年10月10日
Published Date 2002/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431901384
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われわれの脳の神経細胞は,発生,分化の過程を終了したあとは,細胞分裂を終えた細胞として,終生細胞分裂することなく,その生存を維持する必要があるものと考えられている。その生存維持過程に何らかの障害が生じ,中枢神経系の特定の部位の神経細胞が徐々に失われていく疾患を神経変性疾患と呼ぶ。神経細胞の「変性」とは,これまで知られている病理学的機序では説明できず,徐々に神経細胞が脱落していく,というように理解されているが,実のところ,「変性」という機構は,「原因不明」とほぼ同義の言葉といっても過言でないくらい,その実体は謎に包まれていた。
このような神経変性疾患に対して,真に効果的な治療法,予防法を開発するためには,その病態機序を分子レベルで解明することが必須である。歴史的には,神経疾患の研究は,まず臨床的な記述から疾患単位を分離確立することから始まった。そして,病理学的研究を中心として,病変の記述がなされ,それを基盤として,疾患の理解が深まってきた。しかし,このような記述的な観察のみで,疾患の病態機序を解明することは困難であり,病態機序の研究は大きな壁に阻まれていた。
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