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医原性ヤコブ病が多発し,BSEによる変異型ヤコブ病勃発の可能性が高まっているわが国において,プリオン病の早期診断法とともに治療・予防法が緊急に確立されることが必要である。また,プリオン(異常型プリオン蛋白)が病原因子であるとするプリオン仮説(蛋白質唯一仮説)が提唱されて20年が経とうとしているが,いまだにこの仮説の実証に至っていない。これは,プリオン蛋白以外のプレイヤーが,いまだに解明されていないからである。筆者らは,「即戦力的治療法開発」として予防や治療に利用できる薬物・化合物の探索・開発を行うと同時に,罹患動物を用いた実験で有効性が確認できた薬物を,患者でその効果を検討している。予防・治療薬の探索と開発およびその薬理作用の解明により,患者に福音がもたらされるとともに,新たなプレイヤーの解明や感染・病態機序の解明がもたらされることが期待される。
はじめに
プリオン病は,宿主蛋白質であるプリオン蛋白が,フォールディング異常により中枢神経系組織やリンパ系組織に難溶性の凝集体,あるいはアミロイドとして進行性に沈着して,神経変性をきたす致死性の疾患である。特定の宿主蛋白質が,フォールディング異常による高次構造(コンフォメーション)変化のため,難溶性となって組織に沈着する疾患群を「コンフォメーション病」と総称することがあるが,神経難病の中でプリオン病はアルツハイマー病,トリプレットリピート病とともに「コンフォメーション病」の代表的疾患である。しかしながら,プリオン病には他の疾患と大きく異なる特徴がある。それは沈着する難溶性蛋白が感染性を有することである。それゆえ,プリオン病には他の神経難病と同様な神経変性疾患としての側面だけでなく,感染症としての側面がある。感染症としての側面を示す代表的な例は,わが国で多発しているヒト保存硬膜使用による医原性プリオン病や,牛海綿状脳症(BSE)から感染した変異型クロイツフェルト・ヤコブ病の出現である。これらの後天性に生じるプリオン病は若年者に起こる傾向があり,生命予後改善や発症予防のためのプリオン病治療薬の開発が至急に求められている。
Recent outbreaks of acquired forms of human prion diseases are prompting the development of immediately applicable therapeutics and prophylaxis as well as early-diagnostics. Although practical therapeutics and prophylaxis have not been established yet, there are some chemicals or compounds reported to be effective in inhibiting abnormal prion protein formation in vitro or ex vivo and/or in prolonging the incubation periods in experimental animal models. In this article, recent progress in the development of therapeutic and prophylactic drugs was reviewed, and our current research advances in this field were shared.
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