Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
1)硬膜移植後CJD:硬膜移植後CJDは日本で最も多く,患者数は91名にのぼっている。移植の時期は1983年~87年が多く,移植から発症までの期間は16カ月~17年である。使用硬膜はアルカリ処理前のLyoduraが大半である。臨床的に2群存在する(北本)。①Dura-classic CJD:孤発性CJDと同様の症状,経過を示す。②Dura-variant CJD:緩徐な経過,脳病理でflorid plaqueが認められる。
2)変異型CJD:1996年英国で,牛海綿状脳症(BSE)から感染した変異型CJD(vCJD)が初めて報告された。欧州でもBSEの増加とともにvCJDも発生しつつあり,全体で139名に達している。臨床的特徴,さらに異常プリオン蛋白が腸管から侵入し中枢神経系へ伝播する経路と,血液を介しての感染の危険性について紹介する。また日本でvCJDの疑いとして届けられた9例の最終診断も報告する。
はじめに
1996年3月に,英国で牛海綿状脳症(BSE)からヒトに感染したクロイツフェルト・ヤコブ病が発生したと発表され,世界的な恐慌を引き起こした1)。この新しい感染症は変異型CJD(vCJD)と呼ばれ,その後,英国だけでなく欧州にも患者が発生し,現在,139名の報告がある。
わが国でも厚生省研究班により全国調査が実施され,vCJDの患者は認められなかったものの,脳外科の手術時に移植されたヒト硬膜によるCJD患者の多発が指摘され,社会問題となった2~4)。1999年2月の本誌に43例の硬膜CJDを報告したが5),その後も患者の発生は続き,現在,91名に達している。
BSE,およびvCJDの大発生を契機として,プリオン病の研究も飛躍的な進展を遂げている。本稿ではプリオン遺伝子の解析を背景としたCJDの新しい分類,vCJDの診断と病態,さらに腸管からの異常型プリオン蛋白の侵入経路,輸血の安全性,治療などについての最近の知見を紹介する。
1)The nationwide survey documented 91 patients with CJD who had received cadaveric dura mater grafts during the period between January 1979 and September 1991. At least 82 patients received the same brand of dura mater from the same processor. About 10%of patients showed slowly progressive clinical course and neuropathological examination revealed florid plaques in the cerebrum and cerebellum.
2)Among prion disease a variant of CJD(vCJD)has been described in the United Kingdom and subsequently in France. In Japan, 9 referred cases informed as possible vCJD or juvenile CJD. One juvenile CJD remains as probable thalamic form, 2 remain probable juvenile CJD, 2 are diagnosed as juvenile frontal dementia, 3 have alternative diagnosis clinically as malignant syndrome, brain-stem encephalitis and epilepsy.
Copyright © 2003, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.