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Creutzfeldt-Jakob病(Creutzfeldt-Jakob disease;CJD)に代表されるプリオン病は,脳病理における海綿状変化と異常プリオン蛋白(prion protein;PrP)蓄積を特徴とする感染症で,同種間あるいは異種間で伝播しうる。ヒトのプリオン病は,病因から孤発性CJD(sporadic CJD;sCJD),遺伝性プリオン病,獲得性プリオン病に分類され,その有病率は人口100万人あたり年間約1人とされている1)。獲得性プリオン病には,ニューギニアの原住民フォア族における儀式的食人から感染したクールー2),ウシ海綿状脳症(bovine spongiform encephalopathy;BSE)からヒトに感染したと考えられる変異型CJD(variant CJD;vCJD)3),医療器材,医薬品から感染した医原性CJDがある4)。1996年3月に英国でvCJDが報告され,BSEからの感染の可能性があることが発表されると,世界的に大きな社会問題となり,わが国でも1996年に厚生省研究班によりCJDの実態について全国調査が実施された。その調査では,vCJDの患者は見いだされなかったが,脳外科手術時にヒト屍体由来の硬膜移植歴のあるCJDが多数存在していることが指摘された5)6)。その後1999年4月より,わが国で発症したプリオン病の全例登録を目標としたCJDサーベイランス委員会による調査が始まり,2016年9月現在で硬膜移植後CJD(dura mater graft-associated CJD;dCJD)患者は152例に達している。また,その後,わが国でも1例のvCJDの発症があり,その診断でもCJDサーベイランス委員会は大きな役割を果たした7)。本稿では,獲得性プリオン病のなかでも,特にわが国で認められているdCJDとvCJDを中心に述べる。「KEY WORDS」プリオン病,医療行為,硬膜移植,変異型Creutzfeldt-Jakob病
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