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燃え尽き症候群と共感疲労
燃え尽き症候群(バーンアウト)とは、よりよい治療やケアを患者に行なおうとする強い意欲に溢れながらも、強いストレスに長期間曝された結果、極度の心身の疲労や感情の枯渇などをきたす症候群で、「情緒的消耗(疲弊感)」「シニシズム(熱意や関心を失う・脱人格化)」「職務効力感(の減退)」からなる。1970年代に米国で問題視され広く知られた概念で、日本でもその研究、対策が行なわれてきた1。北岡ら2の職種毎の調査では、看護師はどの職種よりも高い疲弊感とシニシズム、どの職種よりも低い職務効力感を示した。今後ますます医療技術が進歩し、専門知識や技術、高度医療の習得や習熟が求められていくなかで、更に患者の高齢化に伴う複雑な状況、倫理的な問題、葛藤が増えていることも相まって、看護を取り巻く環境はより厳しさを増していく。看護師のバーンアウトと職場環境に関する国際的な研究においても、バーンアウト状態を示した日本の看護師の割合は55.8%で、欧米諸国の約30〜40%に比べ非常に高いことがわかっている3。
看護師がバーンアウトにいたる強いストレスの背景には、看護師が患者へ向ける共感など、情緒的な負荷が影響している。看護の対象は多くの場合、身体の苦痛はもちろん、さまざまな喪失体験をし、心身社会的にも苦痛がある人、危機的状況にある人である。また、事件や事故、災害の被害者を対象とすることもある。このような看護に関わるなかで、苦痛を抱えた患者への共感そのものによって心理的疲弊状態に陥ったり、相手の外傷体験を自分のもののように感じたりして(二次的外傷性ストレス反応)、なにもできない疲労感に苛まれることがある。これは「共感疲労」と呼ばれ、感情的なバーンアウト状態につながりうる。特に、衝撃的な出来事を体験した人の支援者や災害の救援者、傷ついた人をケアする人に生じやすいものとされている4。この共感疲労は、ケアの代償、対人援助職の落とし穴などとも言われ、そこにはなにかしたいがなにもできないという状況、無力感や罪悪感が強く影響しているとも言われている。
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