脳血管障害 True or False
肩手症候群は予防できる
江藤 文夫
1
1獨協医科大学リハビリテーション科学教室
pp.177
発行日 1997年2月10日
Published Date 1997/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552108311
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肩手症候群は,Steinbrockerが1947年の論文で記載し,翌年には「上肢の反射性ジストロフィーにおける肩手症候群」と報告して以来,独立した臨床概念として広く認められてきた疼痛性運動障害である.発生機序は未だ明らかではないが,「痛み」という心理学的用語と「侵害刺激受容」という生理学的用語のかけ橋となる臨床症候の代表例のひとつとして諸家の関心をひき,研究課題としてもしばしば取り上げられてきた.
「痛い」と認識する脳の高次機能は,目隠しをして柔らかい布に触ってその生地を認識する体性感覚機構を介した高次脳機能よりは臨床医にとって切実な問題であろう.侵害刺激を受容し,それに応答する機構は,自由終末を含む多種感覚受容器に始まり,その体節での脊髄後角での処理,脊髄を上行する過程での介在ニューロン群,延髄・橋・中脳での処理,これらの過程で生じる応答としての後角への下降路の存在,さらには視床下部,視床,大脳での処理に至ってはまさに五里霧中である.大脳では少なくとも頭頂葉体性感覚野,前頭葉運動野,側頭葉辺縁系皮質での応答がみられる,侵害受容は個体の安全にかかわる警報であるから,自律神経活動,免疫活動までも含めた全身的応答を引き起こして不思議はない.したがって本症候群に対する治療も,症候の表出場である肩と手に対する処置,自律神経系と呼ばれる交感神経に対する処置,免疫学的処置,心理学的処置など,多方面からの対応が試みられ,それぞれに効果が報告されている.
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