Feature Topic がん免疫療法時代の航海図
これから先の航海指針—免疫療法の2年後を先取りする
—論考—がん治療のパラダイムシフト
北野 滋久
1
1国立がん研究センター中央病院先端医療科
pp.468-471
発行日 2016年10月15日
Published Date 2016/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1430200115
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第4の治療
従来のがんに対する薬物療法は薬剤自身が、がん細胞に直接的に作用して殺傷するものがほとんどでした。一方、がん免疫療法は自分自身の免疫細胞(おもにリンパ球)を利用してがん細胞を制御しようとするものであり、これまでの薬物療法とは全く異なるものです。「がん免疫療法」のなかでも、近年、世界的な注目を集めているのが「免疫チェックポイント阻害薬」であり、2011年に進行悪性黒色腫に対して最初の「免疫チェックポイント阻害薬」である抗CTLA-4抗体療法が海外で承認(国内承認は2015年)を受け、2014年に抗PD-1抗体療法が国内外で承認を得ました。更に、抗PD-1抗体療法が、2015年12月に非小細胞肺がん、2016年8月には腎細胞がんに対して国内で承認されました。その他、海外ではすでに承認を得られているものもあります(Table1)。さらに、現在、複数のがん種(胃がん、食道がん、卵巣がん、脳腫瘍など)において、承認に向けての最後の科学的試練(関門)である臨床第3相試験に進んでいる状況です。
これまでがん医療の進歩に貢献してきた「手術療法」、「放射線療法」、「薬物療法」という従来の3大治療に続く、「第4の治療」として「がん免疫療法」がすでにいくつかのがんで実地臨床に導入されており、数年以内にさらに多くのがん種で標準治療の一つになることが期待されています。本稿では、この薬剤がどのような意味で、がん治療のパラダイムシフトであるかについて4つの観点から取り上げます。
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