Feature Topic Over80歳のがん診療
超高齢時代のがん診療について
—論考—超高齢がん診療の夜明け
佐々木 康綱
1,2
1昭和大学医学部内科学講座腫瘍内科学部門
2昭和大学腫瘍分子生物学研究所
pp.246-248
発行日 2016年7月15日
Published Date 2016/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1430200076
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はじめに
本年(2016)の米国臨床腫瘍学会年次総会(American Society of Clinical Oncology;ASCO)で個人的に、最も印象に残った演題のひとつに、現在世界的にも注目を集めている免疫チエックポイント阻害剤であるニボルマブの高齢がん患者おける治療実態を治験のデータより抜粋した米国医薬品食品局(U.S. Food and Drug Administration;FDA)による発表があったⅰ。この発表では、ニボルマブの投与を受けた全1,030名のがん患者の中で、65歳以上のがん患者414名、80歳以上の超高齢がん患者が27名含まれていた。規制当局がこのような発表をすること自体大きな驚きであるとともに、米国では、確実に超高齢者のがん医療をも見据えた研究や評価が進行中であることを強く意識させられた。
今日、わが国のがん医療の現場では、例えば70歳以上の高齢者の診療は日常茶飯事である。80歳以上の超高齢者が、がん治療を受ける例も決してまれではない。現実には、このようながん患者に対する明確な診療ガイドラインは存在せず、それぞれの担当医の裁量でがん診療が行なわれている。今後、日本人全体がますます高齢化するとともに高齢もしくは超高齢のがん患者も激増することが予想される。しかし、このようにがん患者の背景が劇的に変化する兆しを見せている反面、わが国のがん医療がその流れを敏感に察知し、より科学的知見に基づいた高齢者がん医療へと脱皮する時機が到来しようとしている。
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