連載 臨床神経学プロムナード—60余年を顧みて・10
発病期〔小児,青年,成人〕で症候が異なる神経疾患—〔Ⅰ〕肝レンズ核変性症(偽性硬化症とWilson病)〔Ⅱ〕歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)と進行性ミオクローヌスてんかん(PME)
平山 惠造
1,2
1千葉大学(神経学講座)
2日本神経治療学会
pp.1392-1396
発行日 2021年12月1日
Published Date 2021/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416201954
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ここに取り上げる二つの疾患(病態)は,発病期(年齢)により神経症候が著しく異なる。当然のことながら,それぞれの疾患の原著は個別に発表されている。
人体は出生後にも発育,発達を続ける。特に脳は顕著である。その一端を示すものとしてFlechsig(1898〜1927)1)は大脳皮質の髄鞘発生学的分類を提示した。即ち,彼によれば大脳皮質には生下時に早熟部,中間部,晩熟部が区分される。早熟部は脳が更に発達する起点となるところで,体性感覚野(中心後回),聴覚野(上側頭回),視覚野(後頭極),一次運動野(中心前回)が外界からの刺激で発育すると共に,それが刺激になって,早熟部周囲の中間部,更にそれより遅れて晩熟部が発育・発達する,とした(詳細:拙著『神経症候学Ⅰ巻』pp100〜102,図4-Ⅰ-1参照)。彼は大脳皮質についてこの仮説を立てたが,このような観点に立てば,間脳以下,脳幹,小脳についても同様に発育,発達の時期のずれがあることが想定され,或る病態が脳に生じた場合に,発病期により(脳の成熟の度合により)症候が異なることも首肯されよう。
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