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あとがき
桑原 聡
pp.296
発行日 2019年3月1日
Published Date 2019/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416201261
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Spine neurologyという公式用語は英語圏にはない(はずである)。筆者の記憶では2003年に井上聖啓先生が第14回日本末梢神経学会(東京)を開催された際に,この名称のシンポジウムがあり,井上先生がご自身の造語であると話されていたと思う。以後,脊椎疾患の神経学の理解・研究は大きく進歩した。今回の特集に執筆いただいたのは井上先生以下,園生雅弘,福武敏夫,安藤哲朗,三好光太の各先生で,我が国を代表するspine neurologyの大御所と言える方々である。各論文に共通するコンセプトは,脊椎疾患の診療・研究には脳神経内科医が積極的に関与すべきであり,あくまでも正確な神経学的所見を核として画像診断との一致や乖離を解釈するという点である。力作が集まった今回の企画を自賛している。
澁谷和幹先生の筋萎縮性側索硬化症(ALS)におけるsplit handは,やや異色であるが,頸椎症性筋萎縮症との対比において見出され,発展してきたトピックである。記載されているようにALSでは全く同一の神経支配を受けている第一背側骨間筋と小指外転筋(C8髄節〜尺骨神経)が解離し,第一背側骨間筋が圧倒的に優位に萎縮する。これに類似した現象の初めての記載は1992年にカナダのAndrew Eisenによる『Muscle & Nerve』誌の総説中の「ALSでは例外なく母指球が小指球より高度に萎縮する」という1文である。ただしこの部分には文献が引用されていなかった!
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