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あとがき
桑原 聡
pp.112
発行日 2013年1月1日
Published Date 2013/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416101404
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パーキンソン病(PD)や筋萎縮性側索硬化症(ALS)における症状の左右差は長く論議されている問題である。これらの神経変性疾患では,なぜ四肢両側対称性に症状が現れないのであろうか? 近年の報告では振戦発症のPD,上肢型ALSとも群として統計解析すると利き手からの発症が非利き手発症より有意に多いとされている。これは過使用(overuse)による酸化ストレスが関与するとの仮説がある。また2005年に『Brain』誌に発表されたイタリアのプロサッカー選手7,325名の追跡調査では5名がALSを発症している。この発症確率(0.07%)は一般のALS有病率(約0.005%)に比べてはるかに高いことが話題となった。2012年にはアメリカンフットボール選手3,439名のALS,アルツハイマー病(AD)の発症リスクは一般人口の約3倍であったことが『Neurology』誌に公表された。アメフト選手にADが多いことは繰り返す頭部外傷がリスクになっていることは予想されるが,ALSのリスク増加の解釈は難しい。現在習慣的運動や職業と神経変性疾患の発症に関する大規模疫学調査が多方面で進行中である。
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