--------------------
書評 「SCID-5-PD DSM-5パーソナリティ障害のための構造化面接」—Michael B. First, Janet B. W. Williams, Lorna Smith Benjamin, Robert L. Spitzer【原著】 髙橋三郎【監訳】/大曽根 彰【訳】
西村 勝治
1
1東京女子医科大学神経精神科
pp.1032
発行日 2018年9月1日
Published Date 2018/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416201124
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
パーソナリティ障害診断のゴールデンスタンダードの日本語版が上梓された。前身である『SCID-II(DSM-IV II軸人格障害のための構造化面接)』と同じ訳者の手による。本書にはDSM-5に準拠した「ユーザーズガイド」「評価者質問票(SCID-5-PD)」「患者自己記入シート(SCID-5-SPQ)」が収載され,大変実用的で活用しやすい構成となっている。
パーソナリティ障害の臨床的インパクトは大きい。これを適切に把握することの重要性は,臨床家であれば誰もが実感する。しかし評価,診断は必ずしも容易ではない。さらに根本的な課題としてパーソナリティ障害の概念化をめぐる歴史的な議論の存在は周知のとおりである。DSM-5では,DSM-IV-TRのパーソナリティ障害の診断基準がそのまま踏襲されると同時に,「パーソナリティ障害の代替DSM-5モデル」が特例的に付記され,さらなる研究が求められている。これまでのカテゴリカルモデルからディメンショナルモデルへの,産みの苦しみがそこにある。両者のハイブリッドといわれる代替モデルは,特定のパーソナリティ障害の診断名に,パーソナリティの機能や特性に関する情報を特定用語を用いて併記することによって,パーソナリティの病理の系統的評価を可能にすることを試みている。米国立精神衛生研究所(NIMH)のResearch Domain Criteria(RDoC)とも連動しながら,この新モデルはさらに洗練されていく方向にあるだろう。
Copyright © 2018, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.