原著紹介
—Williams, Jr.,R.B.,Gentry, W.D.共編—Behavioral Approaches to Medical Treatment
榊田 博
pp.141
発行日 1979年2月1日
Published Date 1979/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541206779
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- 文献概要
本書の題名は直訳すれば「医療への行動学的試み」だが,「行動療法序説」と意訳したほうが,著述の内容に適切かと思う.行動療法という術語は,我々にもようやく馴染みになってきた.本書はこの領域に関する基礎的な知識を提供してくれる.医療の分野に行動科学的手法が導入された.本書は在来の治療手段に限定せず,精神・心理分析のもとに対応する新しい分野を紹介している.個体の行動を環境や生活態と結びつけて把握しようとしている.単に身体的な不和についてだけではない.あくまでも,個体の生活行動の状態にまで及んで具体的に指導する.これによって疾病の予防を図る.初期治療効果を挙げれば疾病の進展を防止できる.この新しい治療手段は,臨床医学の本来の姿を志向しているといえよう.
本書は,1976年4月にデューク大学で催された生涯教育講座の教材を中心に編纂された.内容は16章に分けられ,17人で分担執筆している.不眠,頭痛その他慢性的な疼痛,不整脈,排尿障害,失禁など,薬物療法がおよびにくかった徴候や,神経性皮膚炎はじめ2〜3の神経性愁訴などへの対応について,新たな方向づけを試みた.喫煙や飲酒の問題,本態性高血圧,心筋梗塞,肥満などにも関連して,性格,生活様式,生活設計など仔細に,具体的な改善方法を提案している.喫煙,飲酒,過食などに対して,とかく禁止的指示だけにとどまっていた従来の医療の傾向を厳しく反省している.
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