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神経内科医は必要でしょうか? 本誌の読者の皆様は,何を阿呆な質問を,と笑い飛ばされることと思いますが,実は真剣な問いかけです。本号の鼎談でも一部をご紹介しましたが,私の奉職する山口大学の地域医療学の教授が,数年前に県内の病院長に“不足している診療科”のアンケートをとったことがあります。この結果の解析については『山口医学』誌の第58巻4号に掲載されておりますので,ご興味のある方はそちらをご覧いただきたいと存じます。ここでは不足感の高い診療科として,神経内科,整形外科,呼吸器内科の3科がベスト3として挙げられていました。大学でもっと神経内科医を育ててどんどん地域に還流させよ,との叱咤激励と前向きに捉えることのできる嬉しい結果でしたが,細かいデータを見ているとあることに気づきました。山口県は7つの医療圏があり,私の教室では,大学病院のある宇部市に加えて,最大都市である下関市と県立の中核病院のある防府市の計3カ所に,3人以上の常勤を擁する神経内科拠点を現在構築しています。神経内科医が比較的充足しているこの3地域からは“非常に不足している”というアンケート結果が出る一方,大学から常勤/非常勤神経内科医を派遣していない,われわれから見れば神経内科の空白地帯と考えざるを得ない医療圏の中には,“不足”のリストにすら挙げてもらっていない地域が複数存在しているという事実です。その地域に神経疾患の患者がいないわけはないので,いったいどんな診療がそれらの患者さんに対してなされているのか,まったく冷や汗の出るような状況が想像できますが,よくわからない,治らないが急変もしない難しい病気を診ている変わり者の集団,common diseaseとは縁のない医師――いたら便利だが,いなければいないで何とかなる,という神経内科医への認識は,いまだ拭いがたくあるのかなと思います。
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