ポートレイト
亀山正邦—老年神経学の開拓者
宇髙 不可思
1
1一般財団法人住友病院神経内科
pp.1483-1487
発行日 2016年12月1日
Published Date 2016/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416200620
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はじめに
亀山正邦(かめやま・まさくに;1924〜2013;Fig. 1)先生は,高齢者の脳の臨床病理学を前人未到のレベルで集大成するとともに,神経内科医として最も早く認知症研究に着手した老年神経学の開拓者である。筆者は幸運にも入局以来長年にわたって直接ご指導を受ける立場にあり,体調を崩されてからは主治医を務めさせていただいた。
晩年の先生に直接伺ったことがある。
「先生のご専門として,神経内科学と老年医学のどちらをより重視されたのでしょうか」の問いに対し,即座に,「老年!」と返答された。先生の学問の基盤は浴風会病院時代の恩師尼子富士郎(あまこ・ふじろう;1893-1972)先生の老年医学・老年学であり,さらに内科学,神経学,精神医学,神経病理学など広範な領域の豊富な知識を動員して,「老年神経学」を確立し,老年者の総合診療や認知症の予防・治療法の開発などを通じて高齢者が幸福に暮らせる社会の実現を目指しておられた。「サクセスフル・エイジング」が,先生の追究された究極のテーマであった。
先生のご活躍は極めて広範囲にわたり,業績は膨大で,その業績を振り返ることが,そのままわが国の老年医学,老年神経学の歴史になると言っても過言ではない。とても全貌を把握できるものではないが,その足跡を時代に分けて振り返ってみたい。
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