書評
—編集 亀山正邦(住友病院院長・京都大学名誉教授) 荒木淑郎(熊本大学教授)—神経疾患の診かた 難しい症例をめぐる診断過程の着眼点
田代 邦雄
1
1北海道大学神経内科
pp.133
発行日 1989年2月1日
Published Date 1989/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406206251
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- 文献概要
神経学の近年の進歩は目ざましく,CT, MRI, SPECT, PETなどの画像診断が登場し,また,分子生物学的アプローチによりいくつかの疾患は遺伝子レベルの異常が証明されてきている。しかしながら神経学の基本は,患者から十分な病歴をきき,神経学的診察に時間をかけ正しい診断をつけることからはじまることに変りはない。画像診断が先行し,神経学的診察が不十分になったり,神経徴候のどこがポイントなのかを知らないものもでてきていることは否定できない事実である。
今回,医学書院より出版された「神経疾患の診かた—難しい症例をめぐる診断過程の着眼点」は,実に時宜を得た企画であるといえる。本書の特徴は,厳選された62症例について,その疾患の本邦における第一人者,最初の報告者,あるいは疾患概念の提唱者が執筆しており,各症例の病歴でまずどこに着眼点をおくのか,つぎに現症を述べその時点で何を考え,さらに補助検査を提示し診断をつけるように配置され,また,入院後の経過,そして剖検例であればその病理所見も記載されている。つぎに,各疾患について「診断と鑑別診断」,「診断の重要性」が解説され,読者がさらに勉強できるように主要文献が紹介されている。これらの解説は,その疾患の概念についての歴史的考察にも触れ,過去の報告例のまとめや疫学,さらには最新の研究の進歩や将来の展望について言及している。文中の特に注目すべき点にはアンダーラインが引いてあり親切である。
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