BRAIN and NERVE-神経研究の進歩 65巻9号 (2013年9月)

特集 Common diseaseは神経学の主戦場である―現状と展望

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特集の意図

 神経内科というと,「難解で,治らない病気を診ている特殊な集団」というイメージがいまだ払拭されていないのではないだろうか。しかし,実はいわゆるcommon diseaseを最も多く診ている,あるいは診ることを期待されている診療科でもある。これら多数の患者は実際にどの科が引き受けているのか,診療が不十分な原因は何か,神経内科が解決すべき課題は何かなど,6つの疾患・症候について取り上げた。

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はじめに

神田 神経内科というのは,おそらく内科の中では最大の患者数を擁する部門で,守備範囲も一番広いと思います。ただ,common diseaseをたくさん診ている割には,common diseaseを診る科,あるいは総合診療に一番近い科として世間に認識されているかというと,決してそうではないと思います。

 私も,学生の講義で,神経内科とはどういう科かというのを最初に話すときには,厚生労働省の特定疾患治療研究事業の対象疾患が56あるうち,神経内科プロパーの病気が17個あり,神経内科が関与する病気がそれに14個足されるので,半分以上は神経内科が診るのだとしゃべります。実際には,それ以上に,common diseaseも診ているわけですが,世間では「難病を診ている科」という見方をされているように思います。

 本日は,神経内科はcommon diseaseをたくさん診ている科であるにもかかわらず世の中ではそのように認識されていないということ,そして,これだけの数のcommon diseaseを診ているにもかかわらず,世間から「神経内科医が足りない」という声があまり起こってこないのはどうしてか,ということについて,今後の展望も含めて本誌編集委員の3人で議論してみたいと思います。

河村・桑原 よろしくお願いします。

認知症 森 悦朗
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Ⅰ.認知症の疫学

 認知症というのは,大脳の病変によってもたらされる症候群をさすのであり,認知症という疾患が存在するのではない。認知症をきたした大脳疾患という意味で,包括的に「認知症」と称すことは,認知症という疾患があるかのような誤解を引き起こすことにもなりかねず好ましいとは思えない。しかし地域住民を対象とした疫学調査では原因疾患までの検討は難しく,「認知症」の有病率(正確には有症率)が検討されている。

 『認知症疾患治療ガイドライン 20101)』では,わが国の65歳以上の高齢者における認知症有病率は3.8~11.0%である(グレードB)とされている。しかし厚生労働省研究班による2009~2012年度に全国8市町で行われた疫学調査の最新の報告2)では,65歳以上の高齢者のうち認知症の人は推計15%(95%信頼区間12~17%)と報告されている。2012年時点の65歳以上人口3,079万人に当てはめて計算すると,約462万人に上ると推定される。有病率は,74歳までは10%以下だが,85歳以上で40%超となる。この調査で示された有病率は,前回(1985年)の全国調査に基づいた2010年時点における推計の2倍,介護保険のデータに基づき厚生労働省が昨年発表した推計の1.5倍であった。これに加え,軽度認知障害(mild cognitive impairment:MCI)の高齢者も13%,2012年時点で約400万人いると推計される。

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はじめに

 わが国における脳卒中患者数は約170万人程度であり,2020年には300万人に達すると推測されている。脳卒中は死因の第4位,寝たきりの原因の第1位,要介護の原因の第1位であり,まさにcommon diseaseである。一方で,全医師に対する日本脳卒中学会認定専門医の比率は1.1%と低く1),また半数以上は脳神経外科医が脳卒中の初期対応を行っている現状がある2)。しかしながら,脳卒中患者のほとんどが外科的処置を必要とはせず,神経内科医がみるべき疾患である。

 本特集の執筆にあたり,脳梗塞診療における担当診療科の実際や,本疾患を神経内科が診療することの意味,また,今後どのような診療体制を築くべきかといった展望を概説するよう依頼があった。しかしながら,本特集の他項で取り上げる疾患とは違い,そういった現状についてのデータに乏しく,そのような論点でまとめることは難しい。

 そこで本稿では,大きく変貌した脳梗塞診療,すなわち一過性脳虚血発作(transient ischemic attack:TIA),バイオマーカー,遺伝子組換え組織プラスミノゲンアクチベータ(recombinant tissue plasminogen activator:rt-PA)療法,新規経口抗凝固薬について概説する。脳梗塞診療において神経内科医が果たすべき役割はますます大きくなってきている。

てんかん 溝渕 雅広
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はじめに

 てんかんは最も頻度の高い神経疾患の1つであり,有病率はおおむね0.8%1,2)で日本全体に100万人の患者が存在する3)。したがって,神経内科医は日常臨床で多くのてんかん患者の診療にあたることになる。しかし,神経内科医の中でてんかんを専門と考えて診療している医師は5%程度4)と少なく,ニーズに対して十分な診療が行えているかは疑問である。てんかんの疫学,日本と外国の現状,今後の神経内科医の関わりについて概説する。

頭痛 竹島 多賀夫 , 菊井 祥二
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はじめに

 頭痛はありふれた症状で,頭痛を感じた人のすべてが患者として病院を訪れるわけではない。頭痛を契機に,脳腫瘍や脳血管障害などを心配して,精査を希望する人もある。一方,一次性頭痛として治療されるべき頭痛患者が,必ずしも適切とはいえない市販の頭痛薬を自己判断で乱用しているような例もある。わが国では,2000年頃を境に,トリプタンをはじめとする有効な頭痛治療薬が順次,使用可能となり,また,片頭痛予防薬も認可され,頭痛医療が注目されるようになってきている。

 世界保健機関(WHO)のAtlas of Neurological Disease(2004)1)では,世界102カ国の調査でプライマリケア医を受診する神経疾患としてトップに頭痛が挙げられており,頭痛診療の需要が極めて多いことが示されている(Fig.1)。WHOの調査では,片頭痛の疾病による重荷(burden)はすべての疾患の中で第19番目であると記載されている。さらに,WHOからAtlas of headache disorders and resources in the world 20112)が公開されている。このAtlasに集められた情報が,グローバルに世界各国における頭痛性疾患に対する意識を高め,頭痛の診療の質的向上に寄与することが大きな目標として掲げられている。

 本稿ではまず一次性頭痛の疫学と概要を示し,次にこのAtlasのデータを紹介し,わが国の現状と国際的な状況を対比しながら,神経内科における頭痛医療の方向性について考察する。

めまい 城倉 健
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はじめに

 平衡感覚は,前庭感覚,視覚,深部感覚の3つの感覚情報を中枢神経系で統合することで得られている。めまいは,これらの感覚情報間のミスマッチや統合異常で生じる異常感覚なので,理論的にはどの感覚情報の伝達ないし統合経路に障害があっても生じうる。しかしながら,視覚や深部感覚の障害では,めまいよりはむしろ眼が見えにくい,足がしびれる,などの症状が前景に立つことが多く,中枢神経系の障害でも,やはり麻痺などのめまい以外の症状が前景に立つことが多い。したがって実際のめまいは,末梢における前庭感覚の異常に起因するものが圧倒的に多い1)

 めまいの原因の多くが末梢前庭障害であるせいか,現在多くの施設において,めまいは耳鼻咽喉科で診療されている。しかしながら一方で,急性発症のめまい患者が最も心配し検査をしてもらいたい臓器は,実は耳ではなく脳なのである(Fig.1)。しかも脳からくる(中枢神経系の障害による)めまいは,末梢前庭障害によるめまいよりも重篤で,緊急を要する疾患である可能性が高い。したがって,原疾患の頻度という観点でみれば,耳鼻咽喉科によるめまい診療は合理的といえるが,原疾患の重症度や緊急度の観点からみると,めまいは神経内科や脳神経外科などの神経の専門家が最初に診察すべきといえる。

 今回,国内外におけるめまい診療の現況と展望についてレビューするよう依頼されたが,上記のような現状を踏まえると,多くの神経内科医がめまい診療に必要となる正確な知識を持つことこそが重要と考える。本稿では,めまいの原疾患を末梢性と中枢性に分けて概説し,その後,原疾患の特徴と頻度を踏まえた効率的なめまいの鑑別法を紹介する。

末梢神経障害 桑原 聡
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はじめに

 末梢神経障害は間違いなくcommon diseaseである。Hughesらによれば一般人口の2.4%,55歳以上の8.0%が何らかの末梢神経障害を有するとされている1,2)。これらの数字は認知症性疾患,脳血管障害とほぼ同様であるが,後述のように末梢神経障害患者数はさらに多いことが推定される。末梢神経障害は病変の分布から多発ニューロパチー,多発単ニューロパチー,単ニューロパチーに分類されるが,それぞれの病型においてさらにさまざまな原因がある。多発ニューロパチーでは糖尿病性・アルコール性・薬剤性(癌化学療法)ニューロパチーが,単ニューロパチーでは手根管症候群が頻度の高い疾患であり,それぞれわが国において数百万人が罹患している。さらに末梢神経障害が存在するかについては四肢の感覚障害,腱反射低下・消失,自律神経症状などの症候により判断されるが,最も鋭敏な補助検査である神経伝導検査を用いた早期診断を加えると,はるかに末梢神経障害患者数は増加する。このように末梢神経障害は膨大な疾患群を含んでおり,日常診療において非常に重要な位置を占めている。

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はじめに

 ビタミンB12は末梢神経障害や,ビタミンB12欠乏による巨赤芽球性貧血に対して30年以上にわたり使用され続けている薬剤である。日本でも発売当初の1980年代には盛んに研究が行われ研究会なども開催されていたが,2000年代になるとその研究も下火となっている。しかしながら,近年,分子生物学の格段の進歩により,ビタミンB12における神経細胞内シグナルなどの詳細なメカニズムが徐々に明らかにされつつある。本稿では,この“古くて新しい薬剤”であるビタミンB12と末梢神経障害について,その歴史から最近の知見まで述べることとする。

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はじめに

 てんかんの年齢別発症率は二峰性を呈し1),小児期と高齢期に発症率が高くなる。小児期はてんかんの好発時期であり,岡山県で行われた疫学研究によると,日本の13歳以下の小児てんかん有病率(/1,000)は5.32)と推定される。小児においててんかん発作が十分にコントロールされない状態は,発作による脳神経細胞への影響とともに心理的・精神的不安による日常生活や学業への支障をきたす。また,重積発作,危険な場所での意識消失発作,転倒発作などは時に生命に危険を及ぼすこともあり,小児期から適切な治療を開始することは重要である。

 「小児てんかんの包括的治療ガイドライン」(日本てんかん学会)3)では,小児も成人と同様に抗てんかん薬による薬物治療が中心とされ,発作型に基づき適切な薬剤を選択するべきとしている。しかしながら,小児では小児特有の成長・発達,行動面や学業面への影響を配慮することが重要であり,行動や認知への好ましくない作用を持つ薬剤の使用は躊躇される。現状わが国で小児てんかん患者に使用可能な抗てんかん薬は限られており,小児てんかん治療の選択肢を増やすことは急務である。

 レベチラセタム(LEV)は日本を含む90以上の国と地域で承認・発売されている,幅広い発作型に有効な抗てんかん薬である4)。LEVは前シナプス終末に存在する神経伝達物質の放出に関連した膜構成蛋白質のsynaptic vesicle protein 2A(SV2A)に親和性を示し,既存の抗てんかん薬には認められないSV2Aとの結合による神経伝達物質放出の調整を主たる作用機序とすると考えられている4)。LEVは欧米において,成人部分てんかんに対する単剤および併用療法に加え,特発性全般てんかんの強直間代発作およびミオクロニー発作に対する併用療法,さらに小児部分発作に対する併用療法の承認も取得しており,英国のてんかんの薬物治療ガイドライン(2012年改訂)では,小児においても併用療法で最初に試みる抗てんかん薬として位置づけられている5)。このような海外での状況に鑑み,新規抗てんかん薬を用いた薬物治療ガイドライン(日本てんかん学会)6)において,LEVは初発の成人/小児部分てんかん/混合てんかんに対する単剤療法,成人/小児難治部分てんかんに対する併用療法,強直間代発作ならびに若年ミオクロニーてんかんに対する併用療法で有効と評価されている。

 N01223試験は,日本人小児部分てんかん患者を対象としたLEV併用療法の有効性,安全性および薬物動態7)を検討した臨床試験であり,有効性を検証する第1期ならびに長期投与時の安全性を検討する第2期で構成された。本試験では,新たに開発されたLEVのドライシロップ剤も合わせて使用された。本稿では本試験の第1期の結果からLEVの有効性および安全性について報告する。さらに,健康成人で実施されたLEVのドライシロップ剤と錠剤の生物学的同等性試験の結果についても追補として合わせて報告する。

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はじめに

 2003年にヒトゲノムの解読が終了し,その後,生体内で機能を発現する蛋白質レベルでの研究が増えてきている。これらの研究は,ある生物学的な系における蛋白質の総体を意味する「プロテオーム」と遺伝子の網羅的な研究を意味する「ゲノミクス」を合わせ,「プロテオミクス(プロテオーム解析)」と称される。プロテオミクスの技術は,ポストゲノム時代の新しい生化学的解析技術として注目され,癌や免疫疾患などの診断や治療に応用されつつある。プロテオミクスを用いて疾患ないし病態特異的な多数の機能性蛋白質群の変化をパターンとして読み取るマルチマーカー解析により,感受性および特異性の高いバイオマーカー群を確定することが可能になる。したがって,この技術は多因子が関与する統合失調症の複雑な病態の解明にも貢献するものと期待される。

 しかしながら,プロテオミクスによる統合失調症の病態研究は,これまでのところ海外でも髄液,血液,死後脳を対象とした研究報告1-5)がわずかにあるのみで,治療反応性の予測マーカーとして応用した研究は国内外ともほとんどない。そこで筆者らは,急性精神病状態の治療反応性を予測する感受性および特異性の高いバイオマーカーを検出するために,プロテオミクス解析技術の1つである表面増強レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析(surface enhanced laser desorption/ionization-time of flight mass spectrometry:SELDI-TOF-MS)を用いて,統合失調症急性期の治療前後において特異的に変化する血漿蛋白質を網羅的に探索した。

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 2013年4月21日(日)~25日(木)にフロリダ,オーランドで開催された14th International Congress on Schizophrenia Researchに参加しましたので,その様子を報告させていただきます。この学会はその名が表すとおり,臨床・基礎を問わず統合失調症に関するあらゆる研究についての国際学会であり,1987年に初めて開催されたときの抄録数は100以下だったのが,現在は1,200を超えるまでの規模に成長しています。発表された研究の抄録は『Schizophrenia Bulletin』誌に掲載されます。本学会のヨーロッパ版ともいえるSchizophrenia International Research Conference(抄録は『Schizophrenia Research』誌に掲載)と交互に,隔年で開催されています。

 今回の開催地であるオーランドはディズニー・ワールドがあるため,学会後に「動物の生態観察」にいそしまれた参加者も多かったのではないでしょうか。しかし,会場となったマリオットホテル(写真1,2)周辺は何もなく,ほとんどの参加者がここか隣のリッツカールトンホテルに宿泊していました。

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 オーストリアのシドニーにて,6月16~20日に開催された,17th International Congress of Parkinson's Disease and Movement Disordersに参加しましたのでご報告いたします。この学術集会は,Movement Disorder Society(MDS)の年次学術集会であり,MDSの会員数の増加を反映して,参加者は年々増加の傾向をみせています。昨年のダブリン(アイルランド)での参加人数は5,100人と伝えられています(http://www.mdscongress2012.org/)ので,今年はさらにそれを上回るかどうか公式の発表が待たれるところです。

 夏の日本から南半球にあるシドニーに降り立つと,そこは冬の6月であり,予想以上に肌寒さを感じました。シドニーは,オーストラリア東南部に位置するニューサウスウェールズ州の州都であり,オーストラリア最大の人口を有し(約400万人),オセアニアを代表する国際都市です。シドニー港に面したベネロング岬に位置するオペラハウスは,この都市を象徴する建造物であり,観光の名所ともなっています。学会の会場となったSydney Convention Center(写真1)は,ダーリング港に面した賑やかな地区に建つ会議・展示施設でした。

連載 神経学を作った100冊(81)

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 ルントボルク(Herman Bernhard Lundborg;1868-1943)はスウェーデンの医師である。1868年4月7日にスウェーデンのヴェルムランドに生まれ,1943年5月9日にエストハンマーで亡くなった。

 ミオクローヌス(μυς:筋, κλὀνος:混乱した動き/ギリシャ語)とは臨床的に,1筋または数筋が急激かつ短時間,不随意的に収縮する現象をいう。

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 この度,医学書院から表題の本が上梓された。第2版である。だが,これがほぼ20年ぶりの改訂であることがすぐにわかる人は少ないだろう。亀山正邦・高倉公朋両先生編集による初版の序にすでに,神経学は「遺伝子レベルの研究が最も盛んな領域」であり,「高齢化によって,わが国では,神経疾患対策が強く要請されている」とある。そのほかに,この20年間に臨床や研究の内容が縦にも横にも著しく拡がった。例えば,認知症が増加したうえにその鑑別診断も細分化したし,MRIをはじめとする画像診断が精緻化し,神経免疫学的病態の知見も増大した。疾患概念そのものが変わったものもある。精密になる一方の診断へのアルゴリズムも均てん化されてきた。当然,それに並行して治療法も進展した。新しい薬物や手術も開発され,治療の選択肢が多くなった。そればかりでなく,EBMの概念も定着し,いくつかの疾患について,「治療ガイドライン」も学会などの責任で作成されてきた。また,20年前にはそれこそ「夢物語」でしかなかった神経変性疾患の根本的治療も,遺伝子治療や細胞治療などによって「もしかしたら」と思わせるような時代になったことを忘れてはならない。

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 研修医たちと接していると感じるのは,彼らが急性上気道炎(以下,本書に倣い「風邪」と表記する)の診かたを知らないということである。市中肺炎や腎盂腎炎,髄膜炎の診療は知っているのに,である。何とも不思議な状況であるが,無理もない。かわいそうなことに,医学教育の流れの中で,風邪を系統的に教わることはまずないのだ。こんなにありふれた疾患であるにもかかわらず,だ。

 おそらく多くの医師は,風邪自体を「そんなことは当たり前」として,そもそも医療上の問題として捉えていないと思われる。いわば医療化されることのない,体調不良の一種として捉えていることがほとんどである。しかし当事者である患者が風邪による症状に対して,民間療法では対処不能として医療を求めはじめたとき,結果として施される診療の中身は,顔をしかめてしまうものが多い。

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次号予告

投稿規定

「読者からの手紙」募集

あとがき 神田 隆
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 神経内科医は必要でしょうか? 本誌の読者の皆様は,何を阿呆な質問を,と笑い飛ばされることと思いますが,実は真剣な問いかけです。本号の鼎談でも一部をご紹介しましたが,私の奉職する山口大学の地域医療学の教授が,数年前に県内の病院長に“不足している診療科”のアンケートをとったことがあります。この結果の解析については『山口医学』誌の第58巻4号に掲載されておりますので,ご興味のある方はそちらをご覧いただきたいと存じます。ここでは不足感の高い診療科として,神経内科,整形外科,呼吸器内科の3科がベスト3として挙げられていました。大学でもっと神経内科医を育ててどんどん地域に還流させよ,との叱咤激励と前向きに捉えることのできる嬉しい結果でしたが,細かいデータを見ているとあることに気づきました。山口県は7つの医療圏があり,私の教室では,大学病院のある宇部市に加えて,最大都市である下関市と県立の中核病院のある防府市の計3カ所に,3人以上の常勤を擁する神経内科拠点を現在構築しています。神経内科医が比較的充足しているこの3地域からは“非常に不足している”というアンケート結果が出る一方,大学から常勤/非常勤神経内科医を派遣していない,われわれから見れば神経内科の空白地帯と考えざるを得ない医療圏の中には,“不足”のリストにすら挙げてもらっていない地域が複数存在しているという事実です。その地域に神経疾患の患者がいないわけはないので,いったいどんな診療がそれらの患者さんに対してなされているのか,まったく冷や汗の出るような状況が想像できますが,よくわからない,治らないが急変もしない難しい病気を診ている変わり者の集団,common diseaseとは縁のない医師――いたら便利だが,いなければいないで何とかなる,という神経内科医への認識は,いまだ拭いがたくあるのかなと思います。

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基本情報

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BRAIN and NERVE-神経研究の進歩
65巻9号 (2013年9月)
電子版ISSN:1344-8129 印刷版ISSN:1881-6096 医学書院

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