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今月号の特集は『神経系の再興感染症と輸入感染症』である。アメーバ性髄膜脳炎,脳マラリア,脳のhistoplasmosis,狂犬病,フラビウイルス脳炎,新型インフルエンザと脳炎・脳症の6本をそれぞれの先生方にご執筆いただいた。特に新型インフルエンザについてはテレビ,新聞などマスメディアでも取り上げられ,WHOをはじめとして,国をあげての対策が取り組まれようとしているが,正確な知見に基づいた的確な対応が望まれる。そのほか総説3本,原著2本,症例報告3本と作田先生の連載,近藤喜代太郎先生の追悼文が盛り込まれ,読みでのある号となった。
また,今月号では「MicroRNAと中枢神経系」というテーマで,横田隆徳先生に総説を執筆いただいた。MicroRNA(miRNA)は,低分子RNAの一種で,メッセンジャーRNAをターゲットにしてその発現量を制御する機能性RNA分子である。miRNAは,これまで知られていなかった多くの生理的機能を持っていることが見出され,さまざまな疾患の病態機序に関与する可能性についても注目されるようになってきている。この研究分野は,最近になり短期間の間に急速に発展してきている領域であり,多くの研究者にとっては,まだ馴染みの薄い分野でもある。本誌では60巻12号においても,河原行郎先生により,「micro RNAの神経生物学」として総説を執筆いただいた。河原先生による総説では,miRNAによる発現調節メカニズム,miRNAによる神経細胞の発生分化,神経細胞の機能維持に関する点に重点を置いて執筆いただいた。今回の横田先生による執筆では,miRNAの神経疾患への関与,miRNAを用いた治療についての展望など,より臨床的な視点に重点を置いた執筆をいただいている。短期間の間に2つの総説が続く結果となったが,それだけ注目されている領域であることをご理解いただければ幸いである。
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