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Somatotopyは神経学用語集では,「体性[機能]局在(身体各部位に対応した中枢神経系での機能局在。Somatotopical localization/ representationとほぼ同義)」とある。この用語を聞けば,神経学に関わっている人は誰でもまずペンフィールドの運動野と体性感覚野のhomunculus(小人間像)を思い浮かべるであろう。しかし,丹治 順先生と岩村吉晃先生の特集総説にあるように,運動野も体性感覚野も研究が進んで,体性局在はますます精緻になり,一筋縄ではいかなくなって,再考せざるを得なくなった。それで,この特集企画が成立したのである。それにしても,お2人のベテラン神経生理学者の語り口は重厚で,しかも洗練されていて,さらにわかりやすい。重厚で洗練された文章と,吟味された図の選択の背景には,長い経験がうかがわれる。
大脳基底核や扁桃体,脊髄ももちろん中枢神経系であり,体性機能の局在があって不思議はない。でも,情動発現に関わる扁桃体などでは体性局在を語るのは相当難しいらしいことが,湯浅茂樹先生の論文を読むとわかる。湯浅先生には「これでよいですか?」と執筆中の草稿を送っていただいた。扁桃体は現在の脳科学研究の中で最も注目されている脳部位の1つであり,個人的にもとても興味を持っている場所でもあったのですぐ読んでみたが,非常に優れた内容で勉強になり,すぐに「OKです」とメールした。私自身は,特集企画をした先生に締め切り前に,「これでよいですか?」と伺ったことなどはなく,せいぜい脱稿と同時に原稿をお送りすることぐらいしかしてこなかった。湯浅先生の学者らしい,謙虚な姿勢は論文内容と同じくらいに勉強になった。
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