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今月号の特集は「パーキンソン病の分子遺伝学」というテーマで,5人の先生からパーキンソン病の分子遺伝学の最新の研究動向をまとめていただいた。1997年に家族性パーキンソン病の家系からαシヌクレインの遺伝子異常が報告され,一躍αシヌクレインを介した神経細胞死の機序解明の研究が開始されたことが思い出される。それからさらにparkin, UCHL1, DJ-1, PINK1, LRRK2, ATP13A2, HTRA2などの遺伝子異常が次々に報告され,その臨床病像の多様性と,遺伝子異常が引き起こす神経細胞死の異なった機序が報告されてきている。私どもパーキンソン病を専門にしない者にとっては,パーキンソン病における遺伝子異常からその神経細胞に至るメカニズムの解明の進歩には驚くべきものがあり,この分野における日本人研究者の貢献の大きさに感銘を受けた。また,パーキンソン病の90%以上を示す孤発性パーキンソン病における,発症感受性因子の遺伝子検索の研究も解説していただいた。これらの多くのパーキンソン病の分子遺伝学から始まる神経変異メカニズムの解析研究の中で,家族性や孤発性パーキンソン病に共通の細胞死プロセスが明らかにされれば,将来的に新しい薬剤開発につながるのではないかと期待される。
今月号でもう1つ興味を持ったのは,Neurological CPCである。「ステロイドが有効な脊髄炎を繰り返した69歳の女性例」というタイトルであるが,診断と治療に悩んだ末に脊髄生検を行い,病理学的にはシェーグレン症候群を考えたいという内容であった。これは2005年の10月のCPCであるが,2007年の現在は視神経脊髄炎の概念がアクアポリン4抗体の存在で変わりつつあるので,大変興味深く読ませていただいた。それぞれの先生が真摯に事実に向かって意見を述べられている点は,すべて今日的意義を持つコメントであると感心した次第である。
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