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あとがき
福田 恵一
pp.914
発行日 2014年9月15日
Published Date 2014/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404102571
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私が大学で講義を受けた頃には,不整脈学や電気生理学は一部のマニアの学問であった.常人の内科医や循環器医にとっては,理解しがたい領域であり,身近に感じるものは少なかった.今回の特集の遺伝性不整脈に関しても,Romano Ward症候群と呼ばれる遺伝性の不整脈というものがある程度知られているだけであった.1980~90年代に入って,パッチクランプ法や分子生物学が格段に発展すると,心筋細胞に存在する各種のイオンチャネルが単離同定され,それらのチャネルの電気生理学的特徴が次々と明らかになった.次いで,1990年代後半から遺伝子解析が一般に普及するようになり,これらのイオンチャネルに遺伝子変異を持つ家系が非常に多く存在することが解明された.遺伝性不整脈とされる疾患も数多く知られるようになった.こうなると心電図上のPQ時間,QRS幅,ST-T変化,U波に至るまで,遺伝子異常に伴うものではないかと考えたくなる.実際,ブルガダ症候群や早期再分極症候群は以前では正常のVariationと考えられていた軽微な変化であるが,現在では疾患概念として成立している.時代の変遷は病気の種類や病態の理解を大きく変化させ,次々に新しいものを作り出していく.一般の臨床医にとり,専門外のことを英語で読むのは困難を伴うことが多い.そうした意味では,こうした和文誌の特集は短時間に最先端のことを知るうえでとても有り難い.今後も多くの読者が希望する領域にフォーカスを当てていきたいと考えている.
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