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「BRAIN and NERVE」60巻6号の特集は,Crow-深瀬症候群(POEMS症候群)である。本症候群は私たちがさまざまな神経難病を研修している頃に報告されはじめた病気であり,ことさらその病気の成り行きに興味を持って読ませていただいた。当時は多発神経炎・浮腫・剛毛それに骨硬化性病変を示す,奇妙で予後の悪い疾患と理解されていたが,1984年に中西孝雄先生が日本の症例102例をまとめてCrow-深瀬症候群という新たな疾患名で報告された。高月病とかPEP症候群などさまざまに呼ばれていたので,疾患名の付け方の難しさや不思議さを感じたことを覚えている。いずれにしろ,この分野の進歩は目覚ましいものがあり,主要な病態はVEGFの作用により説明されることが,有村公良先生の報告に詳しく記載されている。なかでも極めつけは治療の進歩であり,当初は予後不良の疾患として認識されていたが,現在では治療可能な疾患として考えられており,神経疾患治療が確実に進歩している1例として挙げられる。特にその方面の第一人者である桑原 聡先生が自己末梢血幹細胞移植の有効性を述べ,それに続く新たな疾患治療としてサリドマイド療法,抗VEGFモノクローナル抗体療法,それにプロテアソーム阻害剤であるボルテゾミブ治療などが挙げられており,今後が期待される。
総説としては,神経有棘赤血球症の分子遺伝学的な研究の進歩を市場美緒先生がよく整理して述べており,また漆谷 真先生は難治性神経疾患の代表とされるALSの病態仮説をレビューし,加えて彼らの研究であるALS動物モデルへの免疫療法を紹介している。SOD1 Tg ALSマウスに変異SOD1蛋白にてワクチン療法を行うと,発症や罹病期間に有効性が認められている。
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