Update '98
骨粗鬆症の予防
吉本 正博
1
1吉本医院
pp.685
発行日 1998年8月15日
Published Date 1998/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414902530
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プライマリ・ケアを担う臨床医にとって,骨粗鬆症(特に女性の)は治療よりも予防に重点を置くべき疾患と考える.予防の要点は,20~40歳で得られるpeak bone massを高めること,閉経後の骨量の急激な減少を最小に抑えることにある.前者については,正の因子としてカルシウム(Ca)とビタミンDの摂取,適度の運動が,負の因子としては,タンパク質やアルコール,カフェインの過剰摂取,喫煙が挙げられている.カフェインはCaの尿中への排泄を促進することがわかっているが,最近の文献では,中等量までのカフェイン摂取(コーヒーにして3杯程度)では骨量には変化がなかったという.しかし,対象者の1日のCa摂取量の平均が800mgと,日本人の平均に比べてかなり多かったことを考慮する必要がある.また,Caの補給は高齢者に対しても有効であったという報告がある一方で,授乳中の母親に対しては無効であったという報告がある.すなわち,授乳中の母親の骨量は,3~6カ月間に2~4%減少するといわれているが,Ca補給群とプラセボ群との間に,統計学的に有意差を認めなかったという.また,授乳終了後はCaの吸収が亢進し,喪失した骨塩量は回復するが,これに対してもCa補給の効果には統計学的有意差は認められていない.
一方,閉経後の骨量の減少を予防する方法としては,エストロゲンによるホルモン補充療法(HRT)が一般的であるが,長期使用で子宮癌や乳癌のリスクが増大することが指摘されており問題も多い.
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