Update '96
アポリポ蛋白Eとアルツハイマー病
山口 修平
1
1島根医科大学第3内科
pp.919
発行日 1996年10月15日
Published Date 1996/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414901980
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近年,アルツハイマー(AD)の遺伝的な危険因子として,アポリポ蛋白E (apoE)のε4遺伝子型が関連することが明らかになってきた.apoEは血中では脂質の輸送を担っているが,中枢神経系では髄鞘や軸索の維持・修復に関与するとされる.ADとの関連では,まず病理学的に老人斑や神経原線維変化に限局してapoEが沈着していることが明らかにされ,次いで疫学的に家族性および弧発性のいずれのADでもε4を有する率が極めて高いこと,臨床的にはε4を有する例でADの発症が早いことなどが報告されている.一方,痴呆の重症度や罹病期間とは相関が認められていない.
これまでのところ,AD発症に対してε4がどのように関与しているかはまだ不明であるが,最近の縦断的な臨床病理学研究では,ε4の存在はアミロイドβ蛋白の沈着および症状の進行速度と関連が見られ,神経原線維形成や痴呆の程度とは関連しなかったと報告されている.現在までのデータからは,apoE遺伝子型をADの確定診断や発症予測に用いることは困難であるが,補助診断には使える可能性はあると思われる.今後さらに分子レベルでのADとapoEの関連が明らかにされ,ADの発症メカニズムの解明に寄与することが期待される.
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