こどものsocial medicine 病気とともに積極的に生きる
難聴児―2.日常生活へのアドバイス
田中 美郷
1
Yoshisato Tanaka
1
1帝京大学耳鼻咽喉科
pp.818-819
発行日 1992年9月15日
Published Date 1992/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414900580
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難聴があると言語発達が抑制されるが,この言語発達の遅れは難聴が原因であって能力の問題ではない.教育と本人の努力いかんによって解決可能な問題である.しかし,難聴は他人にはもちろんのこと,本人にとってもわかりにくい障害である.聞こえないということがどういうことなのか,真に理解できるようになるのは9歳以上になってからのようである.
これに関連して聾教育の分野では,経験的に,難聴児の発達には9歳頃に一つの節目があることが指摘されてきた(9歳のかべ,→1).認知の発達から見て,こどもは9歳過ぎ頃から自分を客観的に見ることができるようになり,難聴児は自分の障害をはっきりと自覚するようになる.
その結果,勉強や学校生活に立ち向かう姿勢に変化が出てくる.すなわち,学校生活や交友関係の中でいろいろな困難に直面し,それらが難聴に起因することがわかってくると,あるこどもは障害克服に向かって自ら努力するようになる.逆に学業不振や実生活上の問題を難聴のせいにして努力を回避しようとするこどもも現れる.このような違いが生じる背景には,幼児期からの親の教育姿勢が多分にあずかっているようである.それだけに日常生活へのアドバイスは,幼小児期には主として両親およびその周辺に,小学校後半以降には難聴児自身およびその周辺に対して行う必要がある.
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