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Ⅰ.緒言
難聴児のhabilitationは,難聴診断技術の発達,優秀な補聴器の開発,およびそれに呼応した教育方法の進歩によつて著しく変革しつつある。近年Huizing1)によつてとなえられたacoupedic methodは残存聴力を最高に利用することによつて自然な形で言語発達を促す点画期的な方法であり,わが国にも導入されて一部2)3)では立派な成果をあげつつある。しかしながらこの方法はまだ普遍化しているとはいい難く,とくに地方においては従来のろう教育から脱脚できずに昏迷の路をあゆみ,このために本来ならば普通学校で教育を受け得ると思われるような子供も,言語能力の不足からろう学校に止まり,他方では比較的経い難聴にもかかわらず,難聴児に対する理解不足から普通学校より脱落してゆく例も依然として見受けられる。
ところで,言語発達の生理学からすると,難聴児の言語教育で最大の成果を収めるには早期habilitation以外にない4)。この点ろう学校に幼稚部が設けられたのは喜ばしいが,3〜4歳以前のhabilitationや,難聴学級就学程度の比較的軽い感音系難聴児が就学前に一部の例外をのぞき放置されてあるのは,今後解決されねばならぬ大きな課題である。われわれは「幼児言語聴力相談室」で扱つた難聴児のfollow-upを行なつたところ,症例の項で述べるごとく高度難聴があるにもかかわらず,ろう教育も受けずに普通学校で立派に学業を続けている症例を経験した。これに類似した例は古くから認められており,近年Whetnall5),江口・緒方6)らも報告しているが,われわれはこれらの症例を分析した結果,ごく早期より適切なhabilitationを開始するならば,普通学校においごも難聴というhalldicapを十分克服できるのではないかという仮説をたてた。これを証明するためにわれわれは1968年8月上り,とりあえず明らかに残存聴力を有する難聴幼児11名(2〜5歳)についてhome training方式によるhabilitationを実験的に開始した。決定的な結論を得るには今後幾多の年月を要するであろうが,しかしhome trainingが乳幼児期より徹底して行なわれるならば,ろう教育はもらうん,難聴学級のあり方に与える影響は大きいと予測されるので,本論文では主としてわれわれのたどり得た方法論について述べ,続報においてこれら難聴児の言語発達,その評価の方法,その他について報告する予定である。諸賢のご批判を仰げれば幸いである。
Four cases with moderate or severe hearing loss attending public schools were studied and the possibility for the hearing handicapped of having usual public school education was discussed. It was thought that the purpose of the early habilitation was to foster language capacity as a means of thinking rather than as a means of communication.
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