診察術の歴史・4 The Evolution of Physical Diagnosis
古代ギリシャにおける診断学―Corpus Hippocraticum
James K.Gude
1,2
,
吉原 幸治郎
1
1佐賀医科大学総合診療部
2University of California-San Francisco
pp.351-352
発行日 1992年4月15日
Published Date 1992/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414900415
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Corpus Hippocraticum (ヒポクラテス集典)には紀元前5世紀から紀元前4世紀にかけて書かれたおよそ60編の論文が掲載されている.これらはヒポクラテス自身により書かれたものではなく,その著者は不明である.この中には疾病の自然史と診察術が詳細に記載されており,その精密さは古代エジプト,インドそして中国医学を凌ぐものである.
ヒポクラテスは紀元前460年に小アジアのコス島に生まれ,85年後に北ギリシャのラリッサで死亡している.哲学におけるソクラテス,歴史学におけるトゥキュディデス,喜劇におけるアリストファネスらと同時代のヒポクラテスは臨床医学における天才であった(図1).ギリシャ語で書かれているCorpus HippocraticumはLittre1)やJones2)により英訳されているが,筆者はFrances Adams3)による翻訳を好んでいる.なぜなら彼は医師であり,記載されている身体所見を的確に判断できたと思うからである.
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