法医学からみえる"臨床"・8
交通事故死は病死?―死亡の種類"病死"で困った被害者家族
高濱 桂一
1
Keiichi Takahama
1
1宮崎医科大学法医学教室
pp.815
発行日 1991年11月15日
Published Date 1991/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414900264
- 有料閲覧
- 文献概要
事例 198○年10月8日民事事案
単車で仕事に向かう途中の55歳の男が乗用車に追突され転倒した.入院した病院では,左腓骨皮下骨折と顔面,両膝部,右肘部などの挫創および打撲傷と診断されたが,経過良好で1週間後に退院となった.退院の前日,ベッドに起坐して夕食を摂っていたところ,突然息苦しさを訴えて倒れ,看護婦と当直医がかけつけた時にはすでに意識がなく,顔面,口唇に強いチアノーゼが見られ,酸素吸入,心マッサージなど一連の救命処置も奏効せず死亡した.当直医は入院時の胸部X線写真で左上肺野にbullaがあるとの判断から,bullaの破裂による自然気胸→弁状気胸による縦隔偏位→急性心不全との診断を下し病死の死亡診断書を交付した.葬儀も済んで家族が保険会社に保険金の支払を求めたところ,病死だから傷害関係の保険金は出ないと回答され,驚いた家族が弁護士に相談を持ち込み,結局法医学教室に死因についての鑑定を求めることとなった.
Copyright © 1991, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.