シネマ解題 映画は楽しい考える糧[62]
「パンズ・ラビリンス」
浅井 篤
1
1熊本大学大学院生命科学研究部生命倫理学分野
pp.607
発行日 2012年8月15日
Published Date 2012/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414102574
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絢爛たる映像美が紡ぐ薄幸の少女の物語
昔は「俳優」で映画を観ました.つまりお気に入りのスターが出る作品には欠かさず劇場に足を運ぶわけです.しかし最近は年をとって外見よりも内面,アクションより人生そのものに興味をもつようになったせいか,監督で観ることが多くなりました.最新の「ご贔屓」監督は,本作品を手掛けたギレルモ・デル・トロ監督.本コラムでも第39回「ヘルボーイ」(2005年米国)で一度取り上げました.「パンズ・ラビリンス」でも,第79回アカデミー賞撮影賞,美術賞,メイクアップ賞を取っただけあって,独特で絢爛たる世界が展開します.別世界に没入の2時間です.
スペイン内戦時に父親を失い,冷酷な政府軍大尉を新しい父親にしなくてはならなくなった少女オフェリアの物語です.母親はすでに大尉の子を宿しており,オフェリアともども大尉のいる森のなかの前線基地兼宿舎に引っ越しました.大尉の興味はお腹のなかの「息子」にしかありません.国軍とレジスタンスとの激しい戦いのなか,読書好きで夢見がちなオフェリアは妖精と出会い,牧神(パン)の迷宮に導かれて行きます.彼女はそこで自分の本当の出自を知り,本当の自分に「戻る」ために牧神の与える3つの試練に挑むのでした.
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