シネマ解題 映画は楽しい考える糧[57]
「めぐりあう時間たち」
浅井 篤
1
1熊本大学大学院生命科学研究部生命倫理学分野
pp.239
発行日 2012年3月15日
Published Date 2012/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414102452
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三人の女性たちの苦悩と決断の物語
とても濃厚な115分を過ごすことができる作品です.一回目は映画館で観ましたが,二回目のDVDでの鑑賞のほうがずっと感動しました.観れば観るほど味わい深い作品です.一度では味わい切れない内容をもっているのでしょう(またはこちらが成長したのかもしれません).詩的,映画的,哲学的,そして倫理的.台詞の一つひとつがとても深いので簡単には内容を説明できませんが,三つの時代の三人の女性各々の苦悩と決断,彼女らを取り巻く人間模様が繊細かつ流れるように描かれていきます.音楽も実に素晴らしい.
生命倫理の教材として用いるのも楽しみな一本です.優れた作品を他の人びとと共有できることがその理由のひとつ.また同じ人間ですら観るたびに異なる感動と問題意識を抱くことができる作品なので,大勢の人間が観たら人それぞれ異なることを感知,感動,考えることができるのではないでしょうか.若い人びとがこの作品を見て,何を感じ取るか,反応が楽しみです.
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