シネマ解題 映画は楽しい考える糧[52]
「ロバート・イーズ」
浅井 篤
1
1熊本大学大学院生命科学研究部生命倫理学分野
pp.845
発行日 2011年10月15日
Published Date 2011/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414102319
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家族とは何か,人の性は何で規定されるか
鑑賞者の価値観を揺さぶり,内省を促す貴重な一本.私が大学で開講している「映画を通して考える生命倫理」という授業で,学生に今まででいちばん長く見せた作品になりました.通常はその日のテーマに関わる作品を2,3作紹介し,それぞれ関連シーンだけを5~15分程度ずつ取り上げるのですが,本作品については前半45分を流しました.それだけ学生に見てもらいたいシーン,聞いてもらいたい言葉,そして感じ取ってもらいたい事項が多かったのです.
本作は,タイトルにもなっているロバート・イーズという男性の人生最期の1年を,彼の「家族」らとの交流を軸に追ったノンフィクションで,性同一性障害と終末期が大きなテーマになっています.性同一性障害といえば,キンバリー・ピアーズ監督「ボーイズ・ドント・クライ」(1999年,米国)が有名ですね1).主演のヒラリー・スワンクがアカデミー主演女優賞を取ったことを憶えている方も多いでしょう.素晴らしい映画ですが,悲惨な運命が暴力と性表現を伴ってあまりに赤裸々に描写されているため,教室内での鑑賞には向きません.
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