「私の中のあなた」

「スペアパーツ・ベビー」を生み出すことの是非を考える

　110分に愛情と苦悩とノスタルジーとジレンマがぎっしり詰まっています．出てくる人は皆善良で，彼らの言い分には共感できるところがあり，観ている者の心も引き裂かれてしまいます．映画のラストが小説とは劇的に違うのでびっくりしましたが，どちらも独立した物語として楽しめました．主題と登場人物への焦点の当て方が異なり，それぞれに良い点があると思います．

　本作品の主な登場人物は以下の通り．姉の「スペアパーツ・ベビー」，別称「救世主ベビー」として生を受けた11歳のアナ．急性前骨髄球性白血病を発症し繰り返し治療を受け，急性腎不全を併発し瀕死状態の姉ケイト．その間に挟まれた失読症を患っている長男のジェシー．2歳で長女が発症して以来，娘を助けるためだけに生きてきた元弁護士の母サラ．妻に寄り添いながらも，長女の病状と次女アナの思いを冷静に受け止める消防士の父ブライアン．アナの弁護をわずかなお金で引き受ける弁護士のキャンベル．