JIM Lecture 法医学教室直伝―日常診療を「解剖」する!①【新連載】
自然死か,外因死か,それが問題だ
古川 智之
1
1滋賀医科大学社会医学講座法医学部門
pp.308-310
発行日 2012年4月15日
Published Date 2012/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414102475
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本連載では,筆者の法医学を学んだ経験から,総合診療医や家庭医として日々活躍されている先生方の今後の診療に少しでもお役に立てる知識について解説できればと願っております.
「法医学」と聞くと解剖,それも司法解剖のみ連想される方が多いのではないでしょうか.しかし解剖では,「変死体」と呼ばれ病死なのかそうでないのかわからないご遺体も取り扱いますし,解剖の結果病死と判断されることも多々あります.つまり法医学には疾患や病態の知識が必要なのです.また死因は内科疾患に限らず,交通事故,外傷の場合もあります.成人だけでなく小児も対象になります.法医学の守備範囲は亡くなられた方に限りません.虐待,医療事故も取り扱います.
また法医学では,死後経過時間を推定するために死後変化の知識が必要です.ご遺体にとりついた昆虫の大きさから経過時間を特定することもできるため,昆虫学も法医学の範疇ですし,河川でのプランクトン検査も必要なことから,水生学も法医学なのです.白骨化したご遺体の性別・個人鑑定も行いますし,そのほかにも毒物や薬物,倫理問題も取り扱います.
このように対象となる範囲が多岐にわたる学問であるため,私たちが日々生活している社会はもちろんのこと,患者さんの診療をされている先生方にとっても実は関係深い分野なのです.
私は医学部卒業後,内科学,救急医学に従事してきましたが,日々の診療のなかで疑問に思うことが増えてきたため法医学を勉強することにしました.まだまだ勉強中ですが,法医学を学ぶことによって医療や社会の全体像がみえてきました.本連載では6回にわたり,診療面に関連した法医学のトピックスに特化して執筆します.
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