看護の潮 ゆたかな人生への出発
看護人生相談—あなたの心の糧に
死/死との戦いの道づれとして
小田 普
1
1東京医科歯科大犯罪心理・司法精神医学
pp.24-25
発行日 1967年3月1日
Published Date 1967/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661913065
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避けがたい運命との戦い
「死」とのたたかいは私ども,医師と看護婦にとっては最大の職分の一つであり,それゆえ,かえってそれが日常的,機械的に処理されがちなのですが,「全地球よりも重い」生命の価値を考えるとき,「死」との戦いが「慣れ」によって処理されることは,頽廃であると思われます。日常の忙しい勤務の中で,患者さんの「死」に対する戦慄と緊張が忘れ去られるとき,私たちは場合によっては患者さんの不必要な死を,自分たちの怠慢のために,招きよせる場合さえありうるのです。権威のある,大病院でさえ,医療技術のめざましい向上とはうらはらに,このような医師や看護婦の患者さんの生命に対する安易な考え方が「死」を招きよせる事例はなくなっていないようです。
「死」というものは,確かに避けがたい,それに耐えなければならない運命ですけれども,人間の場合「死」はやはりひとつの独特の意味を持っているのです。つまり,人間だけが「死」というものを自分の避けがたい運命としてこれに直面し,これと戦い,さらにはそれを受け入れることができるのです。そういうあり方こそ,人間を人間として特徴づけるあり方なのです。
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