シネマ解題 映画は楽しい考える糧[41]
「ミスト」
浅井 篤
1
1熊本大学大学院生命科学研究部生命倫理学分野
pp.881
発行日 2010年11月15日
Published Date 2010/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414102039
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現代社会の縮図を観る「本当に怖い映画」
久しぶりの「本当に怖い映画」でした.R15指定もうなずけます.普通のホラーは見ている間だけ恐怖を感じるわけですが,この作品は鑑賞中やその直後だけでなく,何日か過ぎた後でも恐ろしさがジワジワと持続し,その種類も多彩でした.スーパーマーケットという狭い閉鎖空間で物語のほとんどが展開しますが,退屈している暇などありません.「映画力」はリアルなCGや派手なアクションではなく,ストーリーと役者の演技,そして作品に含まれる人間についてのメッセージにあるのだと実感しました.ただ,金曜日の夕方に恋人や家族と観る映画ではありません.空腹時に,覚悟を決めて観てくださいね.
ある日突然,正体不明の霧が発生したためにスーパーマーケットに閉じ込められた人びとの2日間が活写されます.情報が遮断され,状況がわからないことに対する恐怖,怪物に対する恐怖,狂信に対する恐怖,集団心理に対する恐怖,人間の本性に対する恐怖,人生の不条理に対する恐怖,銃に対する恐怖.まさにホラーのオンパレード.とりわけ私が怖いと感じたことを少し述べてみましょう.
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