シネマ解題 映画は楽しい考える糧[45]
「クイルズ」
浅井 篤
1
1熊本大学大学院生命科学研究部生命倫理学分野
pp.225
発行日 2011年3月15日
Published Date 2011/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414102132
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純粋な心の尊さと危うさ
1800年代初頭のシェラントン精神病院を舞台に,あのマルキ・ド・サドを主人公に驚きの物語が展開するフィクション.史実に忠実な伝記作品ではありませんが,主な登場人物は皆実在の人びとです.精神疾患に罹患していないにもかかわらず皇帝ナポレオンの命で精神病院に収監されているサド,若く善良で献身的なクルミエ神父,若い小間使いマドレーヌ,そして厳格な新院長のコラール博士の4名です.
シェラントン精神病院ではクルミエ神父の慈愛溢れたケアの方針の下,精神疾患患者がのびのびとした治療生活を送ってきました.神父は繊細で善良な隣人愛溢れる若者です.サドはわいせつ小説発表のかどで閉鎖病棟に監禁されながら治療目的で執筆行為を続けていました.原稿の発表は禁止されていたのですが,小間使いマドレーヌの手を介して外部にわたり裏のベストセラーになります.あまりの評判の大きさのためナポレオンの耳に入り,怒り心頭の皇帝はサドを治療するため「厳格」な診療方法で知られる精神科医コラール博士を送りこみました.
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