シネマ解題 映画は楽しい考える糧[9]
「ヴェラ・ドレイク」
浅井 篤
1
1熊本大学大学院医学薬学研究部生命倫理学分野
pp.269
発行日 2008年3月15日
Published Date 2008/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414101382
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博愛的な女性が犯した大きな「罪」
直球ど真ん中,真っ向勝負の作品です.これだけストレートなテーマの作品もなかなかありません.人工妊娠中絶の倫理的是非を,監督・脚本のマイク・リーが正面から観る者に問いかけるドラマです.とはいっても挑発的でも過激でもなく,お話は至って穏やかで静かに淡々と進んでいきます.
主人公のヴェラ・ドレイクはよき母,よき妻にして近所の誰に対してもやさしい博愛的献身的女性です.そんな彼女がある日突然逮捕されます.時は1950年,英国では堕胎罪が施行されており,人工妊娠中絶は違法で社会的に大きな罪と見なされていました.ドレイク夫人は戦前からずっと,多くの困っている娘たちを助けるために無償で中絶を行っていたのです.
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