シネマ解題 映画は楽しい考える糧[28]
「明日の記憶」
浅井 篤
1
1熊本大学大学院医学薬学研究部生命倫理学分野
pp.769
発行日 2009年10月15日
Published Date 2009/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414101786
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認知症患者とその家族を待ち受ける困難
若年性アルツハイマー型認知症に罹患した男性とその妻の数年にわたる闘病生活を描いた作品.『JIM』読者のなかにもご存知の方が多いでしょう.認知症患者とその家族を待ち受けるさまざまな苦難を真正面から取り上げ,本疾患に関わる心理社会的問題や生命倫理的問題のみならず,夫婦の絆と葛藤を的確に描いているので,医療従事者必見の作品だと思います.
主人公の佐伯雅行は49歳の典型的仕事人間で,東京の広告代理店でバリバリ働いていました.しかし,取引相手の名前が思い出せない,会議を忘れる,同じものをいくつも買い込むなどの物忘れや,思考の流れが滞るなどのエピソードが起きるようになり,神経内科を受診します.問診・診察,長谷川式簡易知能スケール検査,MRI検査などを経て,佐伯は若年性アルツハイマー型認知症と診断されました.絶望する佐伯夫妻.映画はその後,佐伯の疾患の止むことのない進行と妻である枝実子の甲斐甲斐しい在宅介護の様を,一人娘の結婚,初孫の誕生,そして枝実子の職業人としての独立などとあわせて描いていきます.やがて二人の間に決定的な瞬間が訪れ,枝実子は一大決心をするのでした.
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