特集 知っておきたいゲノムの知識
プロテオミクスの解析技術と臨床応用
川上 隆雄
1
,
藤田 芳司
1
1東京医科大学臨床プロテオームセンター
キーワード:
臨床プロテオミクス
,
質量分析法
,
血漿
,
統計解析
,
疾患マーカー
Keyword:
臨床プロテオミクス
,
質量分析法
,
血漿
,
統計解析
,
疾患マーカー
pp.129-133
発行日 2004年2月1日
Published Date 2004/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414101098
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生命現象を総括的にとらえることを目的とした研究の1つであるプロテオミクスが,疾患の早期診断法や創薬の支援技術として成果をあげはじめている.本稿では,プロテオミクスの臨床応用の目的と解析方法の概略とともに,今後の医療分野におけるその位置付けについての私見を述べる.
プロテオミクスと医療
プロテオミクス(proteomics)は,「1つのゲノム(genome)から発現するすべての蛋白質(protein)」と定義されるプロテオーム(proteome)を扱う研究体系であり,ゲノムの機能を明らかにするための有力なアプローチの1つと見なされている1).全分子の存在量や構造変化に関する情報を重視する考え方は,最初から個々の分子に注目する従来の還元的アプローチとは一線を画している.代謝反応など細胞諸機能のうちの多くを蛋白質が担っており,また,現在市販されている薬剤や開発中の新規化合物のほとんどが蛋白質分子を標的にしていることなどから,プロテオミクスは医薬の分野で注目を集めている.そして現在では,同じくゲノム科学の一翼である一塩基多型(SNPs)解析やマイクロアレイ技術と並んで,一定の成果をあげつつある.具体的な研究内容のいくつかとそこから導き出される主な成果を表1に示した.いずれの項目も,個々の患者に対する迅速で適切な治療を提供しようとする点に集約される.
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