特集 知っておきたいゲノムの知識
ゲノムと技術
間野 博行
1
1自治医科大学ゲノム機能研究部
キーワード:
PCR法
,
ゲノムワイドスクリーニング
,
DNAチップ
Keyword:
PCR法
,
ゲノムワイドスクリーニング
,
DNAチップ
pp.110-112
発行日 2004年2月1日
Published Date 2004/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414101094
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ヒトゲノムの塩基配列解明とともに,ヒトのもつ全遺伝子セットが明らかになりつつある.蛋白質をコードしない遺伝子がどの程度あるかは未だ不明であるが,蛋白質を作る一般的な遺伝子のほぼすべてが決定される日は近い.21世紀の医療・医学はこの膨大なヒトゲノム情報によって大きく変革されると期待される.現在なお病因が不明な疾患の発症機構はこれまでにないスピードで解明されると考えられ,それに伴い疾患の診断法・治療法も大きな変化を余儀なくされるであろう.さらに,遺伝子異常を基にした新しい疾患概念の定義,分類の変更も現実のものになるであろう.本稿では,今日の医療の場において利用される遺伝子診断法を概説するとともに,DNAチップを初めとした新しいゲノミクス技術についても紹介したい.
Polymerase chain reaction(PCR)法
PCRは,任意の遺伝子領域を試験管のなかできわめて簡便に増幅する代表的な手技であり,数時間の反応で100万倍ほどの増幅率を得ることも困難ではない.実際には,増幅したいDNA領域の両端に結合する短いDNA断片(プライマー)を基質となる微量のDNAと混和し,DNA合成酵素を働かせる.すると,プライマーを先頭としてDNAが合成されていくが,ここでいったん試験管を熱し,作成された2本鎖DNAを解離させる.その後もう1度冷やすことにより,新たなプライマーの結合が生じ,再びDNA合成酵素を働かせることでプライマーからの新しい合成が起きる.これをn回繰り返すと,理論的にはプライマーで挟まれた領域が2n倍に増幅されることになる(図1).
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