Editorial
トラベルメディスンのエッセンス
伊藤 澄信
1,2
1順天堂大学臨床薬理学
2順天堂大学総合診療科
pp.461
発行日 2004年6月1日
Published Date 2004/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414100949
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SARSの影響で前年に比べて出国者は約20%減少したとはいえ,2003年に海外へ出かけた日本人は1,330万人,海外からの旅行者は520万人.元気な高齢者の増加に伴って,慢性疾患を持つ人の海外旅行も増えている.マラリアなど,海外でのみ認められる感染症の診断と治療だけを知っていればよかった時代から,旅行者血栓症へと名を変えたエコノミークラス症候群,航空機内でのAED(体外自動式除細動器)の使用,慢性疾患を持つ患者への対応など,旅行を取り巻く医学知識も変貌を遂げている.
航空機内の気圧は0.8気圧,湿度は20%,地上でのPaO2 72 Torrが50 Torrになるといわれると,航空機内で病気になる可能性が高くなるのも納得できる.航空機旅行が適切でない疾患のリストは判断の根拠になる(大越論文→p494).スキューバダイビング24時間以内は航空機に乗ってはいけないといわれると,あわただしい現代人には厳しいが,ゆったり過ごすのがバカンスの条件かもしれない.2002年3月に日本旅行医学会が設立され,旅行医学の専門化が進みつつある.しかし,旅行関連事項は国内旅行対応も含めgeneralistにとっても重要な領域である.
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