特集 医療における“物語”―Narrative-Based Medicine(NBM)
Evidence-Based MedicineとNarrative-Based Medicineの統合
酒井 達也
1
1京都大学医学部付属病院総合診療科
キーワード:
根拠に基づく医療
,
エビデンスの適用
,
患者の好み
,
不確実性
Keyword:
根拠に基づく医療
,
エビデンスの適用
,
患者の好み
,
不確実性
pp.872-875
発行日 2003年10月1日
Published Date 2003/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414100718
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根拠に基づく医療(evidence-based medicine, 以下EBM)とは,「個々の患者のケアに関わる意思を決定するために,最新かつ最良の根拠を,一貫性をもって,明示的な態度で,思慮深く用いること」であり,その実践のためには「入手可能な最良のエビデンスを,医師の熟練した臨床能力と患者自身の希望や好みと統合させること」が必要である1).10年以上の歴史を経て洗練されてきたこの定義にはソツがないように思われる.しかし,手元のエビデンスを実際にどのように適用するのかという段になると,実はきわめて抽象的で混沌としている2).臨床能力とは何か,患者の好みというものは本当に存在するのか,存在するとしても正しく知ることはできるのか,統合的に用いるとはどのようなことか,などの問いに対する明確な答えを,EBMはいまだに示していない.物語に基づく医療(narrative-based medicine/narrative medicine)と称される臨床的アプローチの概念や方法(以下NBM)の登場3, 4)は,エビデンスを用いるために欠かせないはずの医療の“アート”の側面が体系的に示されてこない状況と無関係ではない.
本稿では,EBMムーブメントのうねりのなかでNBMが現われてきた状況を展望しつつ,臨床の現場でこれらがどのように統合されうるのかを考えてみよう.
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