特集 医療における“物語”―Narrative-Based Medicine(NBM)
Narrative-Based Medicineの実践
岸本 寛史
1
1静岡県立総合病院心療内科
キーワード:
情報聴取型と受容型
,
開かれた質問と閉ざされた質問
,
NBM実践の5つのプロセス
Keyword:
情報聴取型と受容型
,
開かれた質問と閉ざされた質問
,
NBM実践の5つのプロセス
pp.849-851
発行日 2003年10月1日
Published Date 2003/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414100712
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
Case
腎臓が悪い?
70代の多発性骨髄腫の女性が,4回目の入院をされた時に,「私は腎臓が悪いですか」と尋ねられた.唐突な言葉だったのでそのまま答えずにいると,「腎不全で亡くなるのが楽でいいね」といわれ,息子の葬式の日に息子の嫁の母親が急死され,腎不全だったとのことで,「あんなふうに楽に逝きたい」と語られた.腎機能のデータを聞きたいわけではなく,4度目の入院に死を覚悟されての言葉であった.言葉の背後にある思いを汲み取ることが実に難しいことを教えられた一例である.
2種類の聞き方
Narrative-based medicine(NBM)の実践は,語りに耳を傾けるところから始まる.しかし,話を聞くといっても,いろいろな聞き方があるので,筆者は,情報聴取型と受容型という2つの聞き方を区別している1).情報聴取型とは,閉ざされた質問2)(「食欲はありますか」とか「いつからですか」など,答えの形をごく限られた形に限定するタイプの質問)を多用することによって,診断に必要な情報を効率よく得るような聞き方である.
Copyright © 2003, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.