特集 医療における“物語”―Narrative-Based Medicine(NBM)
Narrative-Based Medicineとは
斎藤 清二
1
1富山大学保健管理センター
キーワード:
narrative-based medicine(NBM)
,
ナラティブ
,
構築主義
,
質的研究法
,
患者中心の医療
Keyword:
narrative-based medicine(NBM)
,
ナラティブ
,
構築主義
,
質的研究法
,
患者中心の医療
pp.834-838
発行日 2003年10月1日
Published Date 2003/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414100708
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Case
10年余にわたり慢性の腹部症状に悩まされた1例
患 者:40歳代の男性.
現病歴:10年前から慢性の下痢,腹痛,無気力に悩まされ,複数の医療機関を受診したが,検査では異常なく,常に原因不明といわれていた.初診時面接において,今までの病歴を丁寧に傾聴し,話し合うなかから,「お腹の調子が悪いと気分が滅入り,気分が滅入るとますますお腹の調子が悪くなる.私は悪循環にはまっていたのですね!」という物語りが浮上した.その後,症状は劇的に軽快し,約6カ月の治療で,薬物もすべて中止したが,症状はその後再増悪することはなかった.
NBMの歴史的背景
Narrative-based medicine(NBM)という概念が初めて提唱されたのは,1998年にBMJ Booksから発行された同名のモノグラフ1)によってである.同書の編集者であるGreenhalghとHurwitzは,ともに英国において一般診療を担うgeneral practitioner(GP)であるとともに,evidence-based medicine(EBM)の研究者でもある.彼らは,前掲書の日本語版の序において,NBMを提唱した理由として,以下のように述べている.「西洋医学においては,治療法を理論的に支える妥当で確実な根拠(エビデンス)を求めることに対して熱心な努力がなされてきた.しかしそれに比べると,臨床において患者自身の体験を理解することや,患者と良好なコミュニケーションを保つことはあまり注目されてこなかった.私達が物語り(ナラティブ)に注目するようになったのは,西洋医学におけるこのような不均衡を強く感じていたためである」.
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