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Q1 EBMとNBMは互いに敵対する医療なのでしょうか?
A そうではありません.EBMとNBMは,「目の前の患者の最大幸福を目指すための相補的な方法論」です.EBMの実践という立場から見ると,EBMのステップ1(問題の定式化)とステップ4(エビデンスの患者への適応)は,患者との対話の過程であり,臨床疫学的方法論のみでは十分に対応できません.患者との対話のための洗練された方法論がNBMですから,NBMはEBMを有効に実践するために,たいへん役に立つといえます.次にNBMの立場から見れば,EBMは現代医療における有力な物語りの1つであるとみなされます.患者との対話において,良質なエビデンスを必要に応じて話題に取り込むことは,患者にとって大きな利益になります.また,エビデンスを重視することは,不適切な物語りが一人歩きすることに対する強力な歯止めになります.さらにNBMは,その患者に適応できるエビデンスが見つからない場合でも,患者との対話を続けることによって,患者にとってより良い物語りへの書き換えを援助することができます.このように,EBMとNBMは「患者中心の医療の実践のための車の両輪」のようなものだといえるでしょう.
(斎藤清二→本号p834)
Q2 話を聞きたいという思いはあるのですが,実際の診療ではなかなか時間がとれません.
A 診療を効率よく進めるためには情報聴取型が中心の聞き方となることは当然だと思いますが,その際,相手の話を限定しながら聞いているという自覚が聞き手の側にあるだけでもずいぶん違ってくると思います.診療の流れのなかで行き詰まりを感じた時に受容型の聞き方を取り入れてみると,その背景がわかり,改善のヒントが得られるかもしれません.話を聞きだすと止まらなくなる人の場合は,あらかじめ「10分だけ話を聞きます」など,時間を限定しておくことによって,話すほうも聞くほうも身が入ります.どういう枠のなかで聞いていくのがよいのか,個々の方に適切な枠組みを考えていくことが必要になるでしょう.
(岸本寛史→本号p849)
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