増刊号特集 泌尿器科画像診断
Ⅲ.疾患別画像診断
12.神経因性膀胱
神経因性膀胱
朴 英哲
1
Eitetsu Boku
1
1近畿大学医学部泌尿器科
pp.353-357
発行日 1999年3月30日
Published Date 1999/3/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413902628
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1 はじめに
厳密には脳,脊髄,末梢神経病変に起因する排尿障害を意味するが,その基礎疾患は必ずしも容易に同定できるものではない。臨床の場では,膀胱排尿筋自体の収縮・伸展異常や心因性の排尿障害,原因不明の場合も含めて神経因性膀胱と総称される。ここでは,(1)脳血管障害やパーキンソン病をはじめとする頭蓋内病変,(2)脊損や二分脊椎などの脊髄病変,(3)直腸癌・子宮癌根治術後などにみられる末梢神経障害を代表例として挙げながら解説するが,このほかにも糖尿病や間質性膀胱炎,膀胱頸部硬化症など,神経障害だけに起因するとはいえない症例も日常の外来では多く受診する。このような疾患も含めて神経因性膀胱の仲間として取り扱うべきであると筆者は認識している。
この疾患における尿路管理のエンドポイントは,(1)腎機能障害やVURをはじめとする上部尿路合併症の克服と予防,(2)頻尿や尿失禁,残尿や尿閉といった下部尿路症状の改善による患者のQOLの向上の2点に集約される。特にQOLに関しては,患者の求める理想状態と泌尿器科医が提供できる状態の間に食い違いがあると,長期的尿路管理が進めにくくなることがあるので,初期の段階から十分な検査を行って上部尿路合併症のリスクとQOLの改善目標を明らかにしておく必要がある。神経因性膀胱の尿路管理には,患者自身のみならず,患者家族,職場,学校などの患者環境を構成する人々の病態への理解が必須かつ最重要項目である。
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